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【NRF APAC 2025レポート】AI×データ活用が変える小売業の未来

作成者: らくしふシフト管理ラボ編集部|Jun 6, 2025 10:10:45 AM

【NRF APAC 2025レポート】AI×データ活用が変える小売業の未来|よりパーソナライズされたマーケティング戦略とアジアの最新リテールトレンド

2025年6月3日から5日にかけて、クロスビット代表の小久保がシンガポールで開催された「NRF Retail's Big Show APAC 2025」に参加しました。本イベントは、ニューヨークで長年の歴史を誇る世界最大級のリテールカンファレンス「NRF Retail's Big Show APAC 2025」の待望のアジア太平洋(APAC)版です。


NRF 2025 Retail’s Big Show Asia Pacific WEBサイトより

本記事では、AIとデータ活用が中心となった現地の熱気と、日本の小売業が今すぐ取り組むべきパーソナライズマーケティングの重要性について、現地からのレポートを元にお届けします。

1.アジア太平洋の小売業が集結!NRF Retail's Big Show APAC 2025 とは?
2.注目の展示やセッション:AI活用はもはや常識。「パーソナライズ」と「即戦力」
3.刺激的な議論と最先端の現場から得る、実践的インサイト
4.イベントから得た気づき:アジア市場と日本市場、次の一手へのヒント
5.まとめ:未来への価値は「人との繋がり」と「市場への挑戦」の中に
【NRFアフターイベントの告知

 

アジア太平洋の小売業が集結!NRF Retail's Big Show APAC 2025 とは?

今回で2回目となる「NRF Retail's Big Show APAC」は、全米小売業協会(NRF)が主催するアジア太平洋地域最大級の小売業界向けイベントです。2025年はシンガポールを舞台に、「Retail Unlimited」というテーマの下、小売業における無限の可能性を探るべく3日間にわたり開催されました。
その規模は圧倒的で、70か国以上から9,500人が参加、240社以上の企業が出展・スポンサーとして名を連ねました。日本からも約600名(参加国中2番目の多さ)が参加し、その注目度の高さがうかがえます。
会場で特徴的だったのは、参加者の動きです。多くの参加者は特定のブースに長居するよりも、会場全体を俯瞰した後は、ネットワーキングや商談など、人と人との交流に多くの時間を費やしているように見受けられました。
小久保も「NRFの価値は、同じ目的を持つ人々が集まり交流を深めることにある」と語るほどに、まさにアジア太平洋のキーパーソンが一堂に会する「コミュニティ」としての価値が際立つイベントでした。

注目の展示やセッション:AI活用はもはや常識。「パーソナライズ」と「即戦力」

展示エリアでは、データやAI関連のソリューションが大きな存在感を放っていました。特に「顧客行動の可視化」や「オールインワンCRMプラットフォーム」といった、すぐにでもビジネスに導入できる具体的なソリューションが多く見られました。
その中でも、ひときわ多くの参加者を集めていたのが、AmazonとGoogleのブースでした。
Googleのブースでは、最新の生成AIであるGeminiを小売業の現場でどのように活用するかの具体例が紹介され、参加者はその応用範囲の広さに聞き入っていました。
Amazonのブースでは、3Dプリンターによる商品作成のデモンストレーションが行われ、オンデマンド製造の未来像を提示し、大きな注目を集めていました。

また、「NRF APAC Innovators Showcase」では、25社以上の革新的な企業が特集され、APAC地域がリテールイノベーションの中心地であることを証明していました。これらの展示から見えてくるのは、もはや「AIをどう導入するか」という概念的な議論の段階は終わり、「いかにしてAIを具体的なソリューションに落とし込み、ビジネス課題を解決するか」が焦点になっているということです。

刺激的な議論と最先端の現場から得る、実践的インサイト

NRF APACの価値は、展示だけに留まりません。学びと交流を深化させる多彩なプログラムが用意されていました。

  • 豊富なカンファレンスプログラム

    基調講演11セッション、分科会18セッションが開催され、サムエル・サンヒョン・キム氏(ロッテリテール)、アリス・リウ氏(Golden ABC)、ジェイミー・ソルター氏(Authentic Brands Group)など、世界クラスのスピーカーによる刺激的な議論が繰り広げられました。オムニチャネル戦略、サプライチェーンの回復力、消費者エンゲージメントといったテーマで、実践的かつ実行可能なインサイトが数多く提供されました。

  • リテールストア・ツアー

    座学だけでなく、シンガポールの最先端店舗を巡る「リテールストア・ツアー」も開催。最新テクノロジーの活用法やクリエイティブな店舗デザイン、そして革新的な販売戦略の舞台裏を直接体験する貴重な機会となりました。
  • CEOクラブ

    さらに特筆すべきは、招待制の「CEOクラブ」です。APAC地域から100名の影響力のある経営者が集まり、業界の課題解決に向けた戦略的連携とイノベーションを促進する、質の高いプラットフォームが提供されていました。

イベントから得た気づき:アジア市場と日本市場、次の一手へのヒント

複数のセッションやイベントに参加する中で、アジア市場と日本市場の違い、そして日本の小売業の皆様のビジネスをさらに発展させるためのヒントとなりうる、気づきを得ることができました。

①「購買体験」の重要性と、トレンド化する地域特性

アジア地域、特にシンガポールのように多様な民族で構成される市場では、「顧客一人ひとりの性格や行動特性に応じて最適化された購買体験」を提供することが、一つの鍵となりそうです。
画一的なアプローチではなく、先進的な店舗作り、データ統合から従業員体験の向上まで、あらゆる側面から個々の文化や価値観に寄り添うことの重要性が浮き彫りになっていました。

ただ一方で、日本の市場においては、国民性や購買習慣が比較的均一で、それを前提としたビジネスが主流でした。しかし、ライフスタイルが多様化する現代において、アジア市場で加速する「個」に注目する視点は、日本の小売業の皆様にとっても、今後無視できないヒントとなるのではないでしょうか。

②「AI前提時代」における具体的なソリューションの模索

NRFの現場では、AIの活用はもはや前提として語られていました。大切なのは、「AIで何ができるか」という抽象的な議論から一歩進み、「自社のこの課題を、AIでどう解決できるか」という具体的なソリューションを模索していくこと。

我々ソリューションベンダーとしても、こうした具体的な課題解決に寄り添う提案が、これまで以上に求められていると感じました。

まとめ:未来への価値は「人との繋がり」と「市場への挑戦」の中に

3日間のNRF Big Show APAC 2025は、まさに世界の小売業の未来を肌で感じるイベントでした。世界のショッピング人口の55%を抱え、中間層が急速に拡大するAPACは、成長の中心地です。今回のイベント全体を通じて、サステナビリティ、人材維持、クロスボーダー展開といった共通の課題に対し、それを単なる壁ではなくイノベーションの機会として捉えようとする前向きなエネルギーが満ちていました。

会期中、ほぼ毎日開催されていたネットワーキングイベントが象徴するように、このイベントの最大の価値は、最先端の情報を得ること以上に、同じ課題意識を持つアジアの同業者と繋がり、新たなビジネスの可能性を模索する場であることです。

今回の参加を通じて得た最大の収穫は、AIとデータを活用してよりパーソナライズされたマーケティングこそが、日本の小売業が今後も成長を続けるための鍵であると再確認できたことです。次回のNRF 2026 APACは、2026年6月2日~4日にシンガポールで開催される予定です。

クロスビットとしては、日本の小売業の皆様が発展することに注力できるよう、日々の業務効率向上を支援していきます。

 

【NRF 2025 APAC アフタートークイベント開催のお知らせ】

今回のNRF参加で得たインサイトを、さらに深く皆様と共有するため、緊急アフタートークイベントを開催いたします!

ゲストに株式会社カインズ 代表取締役社長 CEOの高家 正行様をお迎えし、ともにNRFに参加した株式会社カンリー様、New Commerce Ventures株式会社様と、現地のリアルな情報をもとにトークセッションを行います。セッション終了後は交流会も予定しています。

小売の経営層の方々のみを対象とした人数限定のスペシャルなイベントです!この機会にぜひお申し込みください。